――アンネローゼとキルヒアイスの関係について、どのように思われますか?
キルヒアイスというのは、限りなく優しくて、ピュアな男だと思います。ラインハルトと共に歩んでいく彼の生き方で、支えになっているのは、間違いなくラインハルトのお姉さんであるアンネローゼへの想いなんですよね。本伝では、恋愛感情よりも、“あなたとの約束を守って、ラインハルト様をお守りします”という忠誠の気持ちを重視する方向性だった気がします。後から作った外伝は、若い頃の話であるせいか、キルヒアイスが割と強烈に自分の気持ちを表に出していて……それこそモノローグではっきり言っている場面もありますし(笑)。思春期なのかな?(笑) 若さという部分、多少青い部分があるのだと思います。
キルヒアイスを演じた僕の希望としては、死んだ後でも、アンネローゼからね、彼の気持ちに応えるような言葉をせめて……、もらえたらなあ、なんて思ったりもします(笑)。本当に、一途な愛ですからねぇ……。
――印象に残っているシーンは?
もともと第1期の最後で死ぬことは分かっていましたので(笑)、最終話とその前の話(第25、26話)は、何とも言えずどきどきしながらやっていましたね。
他には、不思議なことに、ラインハルトと一緒にいないシーンを結構覚えていたりするんです。同盟の首都・ハイネセンに行って、ヤン、ユリアンと言葉を交わすシーンや、ラインハルトとキルヒアイスとアンネローゼと3人でお茶をしていて、ラインハルトが“ワインでも取って来るよ”といなくなって、アンネローゼと2人きりになる、少しワクワクドキドキするシーン(笑)などですね。それだけキルヒアイスとラインハルトは一緒にいる時間が長いということなのでしょう、逆にラインハルトがいないシーンは印象に残っていますね。
――キルヒアイスを演じるにあたって、気を付けたことはありますか?
僕は、ひとりでやるナレーション系の仕事の方が多く、アフレコの仕事は少ないので、最初は少し戸惑いがありました。プロデューサーから「あまりアニメだということにこだわりすぎないで欲しい」という話をされたことを覚えていますね。どちらかと言えば、洋画の吹き替えやドラマを演じているつもりで、過剰なデフォルメはせず、素直にやってもらいたい、と……。
そうして始まりましたが、それからが、物凄く長くて(笑)。第1期の最後で死んでから、間に劇場版の製作をはさんで外伝を作ったのですが、劇場版や外伝は、キルヒアイスの死より前の話なんです。若い頃を後から作っているわけですから、やはり、いちばん気になったのは、実年齢とのギャップですよね。逆行しているわけですから(笑)。外伝に入る前に本伝を見直してみたのですが、声も若いし、演技自体も初々しくてね……(笑)。ある程度声が低くなったりしているのは、これはもう仕方がないことなので、なるべく、“キルヒアイス、なんだか歳とっちゃったな”なんて思われないように、外伝では気をつけていました。
――アフレコでのエピソードがありましたら、教えてください。
これだけの声優さんが出てらっしゃるんで、シリーズが始まった当初はなるべく皆で絡みながら録りたいという思いがあったのですが、やはり途中からどうしても抜き録りになってしまって、ヘタするとストーリーの展開すらよく分からないときもありました。ただ、僕は、演じる上でのスタンスがはっきりと決まっていましたから、個別に録音をしても、それほど揺らぐことはなかったです。
また、これだけの作品で素敵な役を頂いた上に、富山敬さんや塩沢兼人さんという、今はもういらっしゃらない方たちと一緒に仕事をすることができたことを、僕はとても嬉しく誇りに思っています。