銀河英雄伝説 ON THE WEB

Interview

第12回 潘 恵子 <アンネローゼ> 「2001年 DVD制作時インタビューより抜粋」

幼い頃から“大人の女性”

――アンネローゼを、沈黙の中で表現

 その美貌ゆえ、弱冠15歳で皇帝フリードリヒIV世の後宮に迎えられた、ラインハルトの姉。ラインハルトが戦い続ける原動力は、ただ姉を奪った権力への怒りのみである。その存在が、ラインハルトの人生、ひいては、宇宙の運命に多大なる影響を及ぼしている女性――アンネローゼを、演じた潘 恵子が語った。



――アンネローゼを演じての感想をお聞かせください。

 ラインハルト、キルヒアイス、そしてアンネローゼ……3人一緒の場面が多かったですね。お茶を飲んでいる場面は、特に印象的です。アンネローゼたちがまだ幼い頃の思い出のシーンもありました。アンネローゼが13歳くらいの頃から、大人になっていく段階を演じてきて、言葉は少ないし、自分を表に出すこともないけれど、それでいて、周囲に与える静かな中、沈黙の中での影響力が凄く強い人だな、と感じていました。私たち声優は、いつも言葉を発して表現しているわけですから、沈黙の中での表現というのはとても難しかったですね。それから、今になってみると、アンネローゼは終始とても大人だったのだと思います。 ……年齢的にはまだ幼い頃から、本当に大人の女性だったんだな、という思いがします。
アンネローゼを演じている頃は、いつもハラハラしている感覚がありました(笑)。ラインハルトを演じている堀川(りょう)さんにもハラハラしていた気がします(笑)。弟のような身近な人を心配する感覚、「この人は、次に何をしでかすのかしら?」「どうしよう、これから何が起こるんだろう?」という感覚が常にあったのです。それは、ラインハルトに対しても、堀川さんに対しても感じていました。私は、実際は4人姉妹の末っ子なので、長女の感覚は全く分からないのですが、アンネローゼを演じて、「長女って、こういうものなのかな」「弟、妹に対してはこんな風にハラハラするんだろうな」と思いました。

――キルヒアイスとアンネローゼの関係について、どのように思いますか?

 キルヒアイスに対しては、弟の友人として、弟を守ってほしい、という気持ちがまず最初にあったと思います。けれど、アンネローゼは年上の人と結婚させられてしまったので、年下の若い男性を恋人のような気持ちで見ていないわけでもなかったのかなぁ……と。若くして亡くなってしまったキルヒアイスへの思いを、どのように表現するのかと思っていましたが、アニメの中では、そのあたりをはっきりさせることなく終わってしまいました。
私個人から見ても、キルヒアイスは、とても好感の持てる青年ですね。年下ではあったけれど、アンネローゼにとって、やはり心落ち着く相手だったのではないかと思います。
演じている広中(雅志)さん本人も、「潘さん、潘さん!」と慕ってくれていたので(笑)、なんとなくキルヒアイスと広中さん本人が交差しているようにも思えました。導いてあげ……られたかどうかは分からないけれど(笑)、自分が年上の“お姉さん”だという意識は常にあったような気がします。私の中にある、キルヒアイスと広中さん本人に対しての、“私の方が年上よ”“お姉さんよ”という感覚を、自分でとても面白く感じていましたね。

――『銀河英雄伝説』について、どのような印象をお持ちですか?

 私の声優としての人生の半分ぐらいでしょうか? もしかしたら、それ以上の時間をかけて作り上げてきた作品です。その時々で、自分の内面的な感情をアンネローゼとだぶらせたり、葛藤を感じたりしながら演じてきたので、私の中では、とても重たい、重要な作品です。
歴史ものを見ているような深いストーリーなので、一生懸命見ないと分からないところがたくさんありますよね。私もいつか、休暇をたくさん貰って(笑)、『銀河英雄伝説』の世界にずーっと浸ってみたいなと思っております。

<潘 恵子 プロフィール>

4月5日生まれ、東京都出身。81プロデュース所属。
出演している主なアニメーション作品には、映画・TVシリーズ「機動戦士ガンダム」(ララァ・スン役 1979〜80年 テレビ朝日)、映画「幻魔大戦」(沢川淳子役 1983年)、TVシリーズ「聖闘士星矢」(城戸沙織役 1986〜89年 テレビ朝日)、TVシリーズ「愛の若草物語」(メグ役 1987年 フジテレビ)、OVA「帝都物語」(辰宮由佳理役 1991年)、映画・TVシリーズ「美少女戦士セーラームーン」(ルナ役 1992〜97年 テレビ朝日)など多数がある。西洋占星術師としての顔もあり、著作も多数。アニメージュ(徳間書店刊)で連載をしていた時期もある。