銀河英雄伝説 ON THE WEB

Interview

第13回 森 功至<ミッターマイヤー>「2001年DVD制作時インタビューより抜粋」

実際に対峙している錯覚にとらわれた

――“親友”との迫真の演技

 親友ロイエンタールと共に「帝国の双璧」と謳われた帝国最高の勇将、ミッターマイヤー。親友の死に涙する背中は、『銀河英雄伝説』の中でも最も印象的なシーンのひとつであろう。ミッターマイヤーを演じた森 功至が、ロイエンタール役の若本規夫との芝居についてなど、制作当時を振り返って語った――。



――ミッターマイヤーというキャラクターについて、どのように思われますか?

 アニメーションでは、正義の味方だとか、変身できちゃうとか、人間としての実像とは全然違うキャラクターを演じることが多い中で、このミッターマイヤーという役は、かなりシリアスです。しかも、軍人。更に、二枚目のヒーロー的なキャラクターともまた違う。どちらかと言うと、性格的な部分を出していかなければならないので、難しい役だという印象はありました。
『銀河英雄伝説』という作品は、難しい言葉遣いをするんですよね。我々にとってはごく普通の「君は……」とは言わず、「卿は……」と言ったり。だから、しゃべっていても、自分ではなかなかピンと来ないわけです(笑)。多少の違和感はありましたが、この作品にはこれでいいのかな、なんて思いながらやっていましたね(笑)。
ただ、僕は、ロイエンタールを演じた若本(規夫)さんと、偶然にも同じ歳なんです。キャラクターの設定は、実際の僕らよりもう少し年代は若いのでしょうけれど、演じている僕らが感覚的に同世代であるということから、敢えて意識しなくてもロイエンタールとミッターマイヤーとの対比を表現できたのではないかと思います。僕の台詞回しは、どちらかと言うと、ちょっと甘い感じで、彼は逆に骨太な雰囲気を持っていて、釣り合い、バランスがとれていたのではないかと思います。

――アフレコに際してのエピソードがありましたら、教えてください。

 (声だけで演技をする)アニメーションでも、やはり相手役によって演じ方が変わるんですよね。ロイエンタール役の若本さんが、役にのめり込んで台詞をぐわーーっと言ってくるほうなので、僕も、彼の言い回しに乗っかって台詞をしゃべっていくという感じになり、お互いの相乗効果が上手く働いたように思います。時々、もしかしたら、絵の雰囲気と、僕らが演じている台詞の雰囲気とが、少しかけ離れてしまっているように感じたりもしたくらいでした。現実に、僕と若本さんの2人がやり合っているという錯覚にとらわれるような、そういうときが本当にあったのです……。多分それは、若本さんの演技が、僕にそうさせてくれたのだろうと思います。だから、ロイエンタールが彼で本当に良かったと思っています。

――『銀河英雄伝説』について、どのような印象をお持ちですか?

 小説が、SFファンの間でとても好評な作品だったということで、それをアニメにするときに、果たしてどれだけのものを表現できるのかな、という思いはありました。読んだ本が映像化されたときに、それが自分の抱いていたイメージと全く違う、ということは多々ありますからね……。 
ほとんど主役級の声優が一堂に会した作品でしたので、楽しくもあり、何人か先輩たちもいらっしゃる中での緊張感もあり……と、いろいろな意味で面白い作品でした。ストーリー的にも、とても厚みのある作品でした。ひとつだけ、キャスト全員が揃って本番に臨んだのが、数えるほどだったのが、残念ではありましたが……。
何年後かに『銀河英雄伝説』が今とは違う役者でリニューアルされたとしても、僕は、絶対に僕らがいちばん良いんだぞって(笑)思いますよ。そのくらい、皆がシャカリキになってやれた作品だった気がします……。

< 森 功至 プロフィール>

7月10日生まれ、東京都出身。オフィスもり所属、代表。
以前は田中雪弥名義で活動していた。1970〜80年代のヒーロー声優として名を馳せ、主役級キャラを多数演じている。出演している主なアニメーション作品には、TVシリーズ「マッハGoGoGo」(三船剛役 1967〜68年 フジテレビ ※田中雪弥名義)、TVシリーズ「サイボーグ009」(島村ジョー役 1968年 テレビ朝日 ※田中雪弥名義)、TVシリーズ「科学忍者隊ガッチャマン」(大鷲の健役 1972〜74年 フジテレビ)、TVシリーズ「はいからさんが通る」(伊集院忍役 1978〜79年 テレビ朝日)、TVシリーズ「機動戦士ガンダム」(ガルマ・ザビ役 1979〜80年 テレビ朝日)、TVシリーズ「新釈眞田十勇士 The Animation」(井伊直政役 2005年 WOWOW)など多数がある。