――ロイエンタールを演じる上での苦労はありましたか?
難しい男なんですよねぇ。まず、気持ちを表に出さないでしょう? エネルギーはグーーッと抑えているのに、そのエネルギーのマグマみたいなものは誰よりも激しく、真っ赤に燃えている……。しかし、それは決して表には出さない。本当は激しい欲望、マグマ、エネルギー……、そういったものを内に秘めて、淡々としゃべらなければならない所が、本当に難しかったですね。
また、この作品は、台詞自体が、普通のアニメとは違います。漢文調であったり、非常に格式の高い言葉遣いなんです。果たして若い人たちにこの言葉が分かるのかな?というような台詞が随所にちりばめられているので、もちろん演じるほうも、そりゃあ難しいわけです(笑)。で、そういう台詞の難しさに気をとられていると、ブレスが合わなかったりしてしまう。だから、森(功至)さんと馬鹿を言いながらやりましたね(笑)実は2人とも結構緊張しているんですが(笑)、それを、「ほら、またトチった!」なんて言ってお互いのキズを舐め合いながら(笑)、慰め合ってやっていましたね。
――ロイエンタールとラインハルトとの関係について、どう思われますか?
ラインハルトもロイエンタールも、共に野心家ですからね。ミッターマイヤーは、敵を作らないタイプと言うか、虚心坦懐の人物ですから、ラインハルトから見た場合、ロイエンタールの存在のほうが邪魔になってきたのだと思います。また、ロイエンタールは、(ラインハルトの)そういう思いを敏感に感じる繊細さを持っていますからね……。具体的に行動されたり言われたりしなくても、“気”のようなものを感じ取って、ラインハルトの術中に嵌っていかざるを得なかった……、そんな2人の関係が見える気がします。
――ロイエンタールの最期を演じて、如何でしたか?
感動しましたよ。長い日数をかけて作ってきた作品が、遂にこれで終わった……!という思いもありました。ロイエンタールが、本格的に自分を出してきたのは、「第4期」で叛乱を起こして以降です。それからは、もう抑えることはしない、自分を出していく台詞が多くなりましたから、最期はやっぱり……気持ちは、相当動きましたね……。
――ロイエンタールという人物に対して、どのような印象をお持ちですか?
言葉で説明すると、いろいろあってなかなか言い表せないので、もう端的にイメージで言うと、氷の柱の中で真っ赤なバラが燃えているような、そんな感じの男だと思います。気障な言葉ですけど(笑)。
野心家であり、頭も切れるし、武将としては一見恵まれた人物ですけれど、その裏には、母親との葛藤やトラウマといった陰惨な面が隠れています。だから、ミッターマイヤーのように一言で分かりやすくはとらえられませんよね。裏と表を見て、総合的な印象でとらえると、やはり、悲劇の人だと思います。最期は非業の死を遂げて……、本人はみじめだとか悲劇だとか思っていないと思いますが、客観的に見ると、悲しい人物であったのかなあ、と思います。