銀河英雄伝説 ON THE WEB

Interview

第19回 古川登志夫<ポプラン>「2001年DVD制作時インタビューより抜粋」

陽気な毒舌家・ポプランの表面と内面の落差を演じる面白さ

 スパルタニアンのパイロットで、ハートのエースの称号を持つ撃墜王。女性関係はシェーンコップと共に「双璧」と言われた。一見陽気なお調子者だが、鋭い観察力と複雑な内面性をも合わせ持つ不敵な毒舌家・ポプランを軽妙に演じた古川登志夫が、そんな彼の二面性について語った。



――ポプランという人物について、どのような印象をお持ちですか?

 表面的には、大胆不敵で女好き、陽気で軽佻浮薄……といった、お調子者のイメージがありました。私自身、基本的にそういう(軽い)トーンの演技を得手とする所があるので、最初はやりやすいキャラクター、好きなキャラクターのひとりだと思っていたんです。ですが、実際に収録を始めてみると、実は、内面的には鋭い観察力や重層的な精神構造を持っていて、見た目よりはなかなか複雑な人間だったんです。そういう表面的なものと内面的なものの落差を演じるのは、非常に大変な分、面白かったですね。
彼の、明るく陽気な部分は、戦場で実際に殺し合いを繰り広げている緊張の裏返しのようにも思えます。それから、彼のあの独特の毒舌も、彼の中の反権力・反権威の反骨精神の表れのように思えたりもして、本当に複雑な精神世界を持っている人間なのだと、(収録の)途中から認識が変わっていきましたね。
戦場で彼は、常に命のかかっている極限状況にいる。そういう緊張感から生み出された鋭さ、それから反権力・反権威の意識から湧き出る怒りが、戦場で凝縮されて噴き出していて、逆に、そこから解放されて戦艦に戻ってきたときには、それとは全く対照的な雰囲気を醸し出しているわけです。その落差がはっきり出れば、と思っていつもやっていました。

――ポプランを演じる上で、苦労されたのはどういう点ですか?

 キャラクターのある一面と、その対極にある一面、ふたつの面を行き来しながらその落差を表現できると、キャラクターが急に魅力的になります。だから、僕は、どのようなキャラクターを演じる場合でも、それを心がけているんです。表面上で読み取れるキャラクターの性格と真反対にある本質のようなものをいつも表現しようとしているわけです。ポプランの場合は、明確に二面性があるのですが、それをどのように表すのかが非常に難しかったですね。簡単に言ってしまえば、“へらへらしている部分”と、“キュッと締まっている部分”なんですが、どのように表現するのかは大変でした。その分、面白くもありましたけどね。

――故富山敬さんについて、何かエピソードがあればお聞かせください。

 富山さんは、本当に後輩の面倒見も良く、優しい人なんです。ソフトで、柔和で……。僕らが駆け出しの頃から、一緒にお仕事をさせて頂いても全く後輩を緊張させない先輩で、“僕もいつかあんな風になりたいなあ”と思っていた憧れの、理想の人でした。いつでも、お顔を拝見するとホッとするような所がありましたね。どこか、ヤンと重なる部分があって、本当に“ヤン=富山敬さん”という印象です。
だからこそ、あのヤンの死のシーンには、特別な意味が付加されて、個人的にも非常に印象に残っているシーンになりました……。

――『銀河英雄伝説』という作品については、どのように思われますか?

 『銀河英雄伝説』は、こういうSFの要素を持った系統の作品の中でも、ずば抜けて、ある種の気品のようなものが感じられる作品ですね。そういう所を、僕は気に入っています。
今になって見直すのは、どこかくすぐったいような恥ずかしいような気持ちもあります(笑)。若い頃の未熟だった部分もそのまま残っているわけですからね。まあ、全部録り直すわけにもいきませんし(笑)、DVDという形になるのは、やはり嬉しいです。
幅も奥行きもパワーもある魅力的な作品だと思いますので、“あなたの心に銀河の歴史がまた1ページ”という感じで(笑)、楽しんで頂ければと思います。

< 古川登志夫  プロフィール>

7月16日生まれ、栃木県出身。青二プロダクション所属。
1970年代から活躍を続け、クールな二枚目から三枚目まで幅広い役を演じこなす。出演している主なアニメーション作品には、TVシリーズ「機動戦士ガンダム」(カイ・シデン役 1979〜80年 テレビ朝日)、映画・TVシリーズ「うる星やつら」(諸星あたる役 1981〜86年 フジテレビ)、映画・TV「ドラゴンボール」シリーズ(ピッコロ役 1986〜97 フジテレビ)、映画・OVA・TVシリーズ「機動警察パトレイバー」(篠原遊馬役 1989〜90年 日本テレビ)、など多数がある。