――“政治家”トリューニヒトを演じてみて、如何でしたか?
この作品に出演するまでは、僕は、本格的にアニメの仕事をしたことがなかったんです。ちょっとした役をいろいろとやってはいましたが、こんな風に演説のような長い台詞を言う役をやったのは、初めてだったと思います。ですが、僕は、シェイクスピアを中心とした舞台の経験が長かったので、逆にやりやすかったような気がします。アニメの場合、一言二言ぽっと口をはさむような台詞のほうが、なんとなく難しい所があります。シェイクスピアには、政治劇というものがあって、そこでよく演説をするんですよね。他にも、『リア王』のエドマンド役をやったこともありますが、冒頭で登場した途端に、“私生児の俺をなんでこの世に産んだんだ”というような長い台詞をいきなりバーッとしゃべるんです(笑)。そういう経験があったから、(アニメでの初めての役が)長々と演説して、民衆を左右するような役で却って良かったな、と思っています。アニメにもこういう世界があるんだと、いい意味で新鮮でした。
何万という大衆を目の前にして、彼らをどう操り、動かしていくか……、ヒトラーがドイツの民衆をどんどん取り込んでいったような感じで、いかに自分の弁舌で他人をコントロールできるか……。さすがに、そこまで壮大には考えていないけど(笑)、やはり政治家というのは“言葉”で生きているものなのではないかなあ、とは思いましたね。
――アフレコに際して、何かエピソードがありましたらお聞かせください。
いちばん印象に残っているのは、僕がトップの政治家(の役)で、その部下というか……、軍人も含めて、自分の支配下にいる人たちを演じるのが、大ベテランの声優さんばかりだったということですね(笑)。僕なんか、まだぺーぺーだったのに、内海(賢治)さんとか羽佐間(道夫)さんとか、あの方たちが僕の部下だったんですから……(笑)。“まいったなぁ、なんでこんな大先輩たちに命令しなければいけないんだろう”なんて、心の中で思っていましたね。諸先輩方が大勢出演していたのに、役の上では僕がいちばん偉そうで、でも、現場では、立派な先輩たちが悠々と行き来していらっしゃって(笑)。“この人たちに命令しづらいな……”と、困っていましたよ。現実世界の上下関係がいちばん気になりましたね(笑)
――『銀河英雄伝説』という作品を、どのように思いますか?
難しい話ですよねぇ……。ただ単に“いい人”が“悪い人”と戦う、というだけのストーリーなら非常に分かりやすいのですが、同盟側には同盟側の正義があるし、対する帝国側にも帝国側の正義がある。それぞれの組織の中で人間もまたひとりひとり違うわけで……、そういう意味では、とても複雑な人間関係と組織のぶつかり合いですよね。とにかく、アニメとしては、非常に難しい作品だなあと思いましたね。
皆さんには、この長いストーリーを、DVDでじっくりご覧になって頂きたいと思っています。たとえば、夜の7時頃から夜中の2時頃まで見て、それを1週間続ければ、この世界観やストーリーの流れが大体分かると思うので(笑)、『銀河英雄伝説』という壮大な物語を是非、連続して見てください。