第22回水島 裕<ミュラー>「2001年DVD制作時インタビューより抜粋」
もっとドロドロした台詞を吐いてみたい、と思いながら演じた“優等生”ミュラー
銀河帝国軍提督の中では最年少でありながらその戦歴は多く、「鉄壁ミュラー」と称されて「双璧」に次ぐ名声を得た。戦場での勇猛な活躍にはそぐわず、普段は温厚で控え目な性格で、敵将であるヤン・ウェンリーにも「良将」と評された。そんな好青年、ミュラーを演じた水島 裕が語った。
――ミュラーについて、どのような印象をお持ちですか?
良くも悪くも、“優等生”ですよね。……本当は僕、こういうタイプがいちばん好きじゃないんですよ(笑)。どちらかと言うと、極端な役のほうが演じていて面白いと思うんです。ミュラーは、帝国軍の中でも、いかにも“いい人”っぽい人物でしたからねぇ……。もっとドロドロした台詞を吐いてみたいなあと思ったことを覚えています。
実は、僕はきちっとした優等生役は、あまり経験がないんですよ。サモ・ハンも決して優等生ではありませんし、『スター・ウォーズ』のルーク・スカイウォーカーを始め、何を演じても激しい感情を表現する場面が必ずあって、演じながら自分もいろいろな思いを味わうのですが、ミュラーにはあまり激したシーンがありませんでしたねぇ……。
――アフレコでのエピソードがありましたら、お教えください。
必ずコーヒーとお菓子がありました(笑)。
当然、音響監督の明田川(進)さんを筆頭にスタッフも、そして僕たち役者も、アニメの画面を最初から最終のシーンまで見て収録に臨みたいんですよ。もちろん、台本は読みますが、やはりちゃんと絵を見て、作品を把握し、理解してやりたいのです。ですが、制作の進行具合など様々な理由があって、どうしても絵の色合いが少なかったりとか……、まあ、要するにモノクロだったり(笑)、若しくは線だけだったりしてしまうわけです。そういう状況の中、スタッフの「ごめんね!」という気持ちがそのお菓子に表れているような気がしてね(笑)。もちろん他のスタジオにもお菓子くらいはあるわけですが、何となく他のスタジオのお菓子とは違う空気を感じたのは僕だけだったのでしょうか(笑)
――『銀河英雄伝説』という作品について、どのように思われますか?
お忙しい方ばかりが出演されていたからだと思いますが、台本の10ページから12ページまで、27ページから31ページまで、という風に区切って収録されることが多かったので、あまり全体を見る機会がなく、今日に至っています。ですから、「どのような作品でしたか?」と問われるならば、「……長かったですね」とお答えするしかないのですが(笑)、やはり長く続くということは、製作者側と見る側の双方が熱意を持って携わらないと実現できることではないと思いますので、そのどちらをも魅了した作品なのだと思います。
それから、今考えると、本当に凄いキャスティングなんですよね。今では、絶対にあり得ない。この世界に入ったからには1回は出てみたい、ある意味『徹子の部屋』のような作品だったと思います(笑)。だから、いちばん思うのはラッキーだったなあ、ということです。声優の仕事をしていて、タイミング良く『銀河英雄伝説』に参加できたことが、本当にラッキーだったと思います。
< 水島 裕 プロフィール>
1月18日生まれ、東京都出身。ノット・コミュニケーションズ所属。
歌手、アイドル声優として人気を得る一方で、「連想ゲーム」(NHK)の名解答者として活躍した。出演している主なアニメーション作品には、TVシリーズ「花の子ルンルン」(セルジュ・フローラ役 1979〜80年 テレビ朝日)、映画・TVシリーズ「六神合体ゴッドマーズ」(マーズ/明神タケル役 1981〜82年 日本テレビ)、OVA「デジタル・デビル物語 女神転生」(中島朱実役 1987年)、TVシリーズ「遊戯王デュエルモンスターズ」(光の仮面役 2000〜04年 テレビ東京)、TVシリーズ「ツバサ・クロニクル」(サクラの父役 2005年〜 NHK)など多数がある。