――ケンプという人物をどのように思われますか?
頑丈でたくましい男性を演じることが多くなってきた時期に頂いた役でした。洋画の(アーノルド・)シュワルツェネッガーや(シルヴェスター・)スタローンの吹き替えなど、いわゆる“筋肉マン”(笑)の役をたくさん演じている時期です。だから、(『銀河英雄伝説』の)他のキャラクターに比べても、ケンプにはやはり力強さが要求されていたと思います。
それから、印象に残っているのが、家族が出てくるシーンです。2人の子供に「これから戦争に行くけれど、必ず戻ってくるから」と言い聞かせている場面……。家族を大切にしているという彼の一面をきちんと描いてもらえたことが、嬉しかったです。戦争では、いつも死と隣り合わせにいるわけですから、運が良ければ帰って来ることができますが、基本的には死にに行くようなものです。でも、ケンプは、家族には「必ず帰ってくる」と約束する、そういう愛を持っている男なんですよね。そういう部分は僕も気に入っています。
――アフレコの際のエピソードはありますか?
とにかく、よくこれだけの声優陣を集めましたよね。予算もあるだろうし(笑)、これだけのことをするのはなかなか大変だと思います。収録に初めて参加したときに、納谷悟朗さん(メルカッツ役)を筆頭に、声優界をリードしている方たちがたくさん参加していらっしゃって、本当にびっくりしました。そして、「こういう雰囲気で仕事をしてみるものだなあ」と思いました。やはり、先輩方とはだんだん一緒に仕事をする機会が減っていきますから、そんな中で、先輩たちに囲まれて仕事をすることができたことは、やはり良かったと思いましたね。
ただ、収録には途中から参加したので、作品全体の世界観がなかなか掴みきれなかったのが、いちばんのハンディでした。それは、先に参加していらっしゃった先輩方にいろいろ聞いたりして、作品世界に入っていきました。
――『銀河英雄伝説』について、どのような印象をお持ちですか?
宇宙や銀河を舞台としたアニメーション作品の中でも、これだけ長く続いた作品というのはありませんよね。“銀河を支配する”という野望を抱くという、僕なんかには想像できないくらいのスケールのストーリーに、人間関係や人間愛、憎しみ、駆け引き、裏切りなど、様々な要素のドラマがきちんと確立し、絡み合っていて、単に長いだけではなく、人の心に残る作品だと思っています。
これだけのスタッフと、僕にも想像がつかなかったくらいの豪華な声優陣が揃って、本当に楽しい作品になっていると思います。まだ見ていないという人も、1度見てみたらあっという間に最後まで見てしまうのではないかと思います。