銀河英雄伝説 ON THE WEB

Interview

第3回 石黒 昇(総監督)  「1999年 外伝『螺旋迷宮』制作時インタビューより抜粋」

長台詞,リアルなキャラクター,200人余の声優……
イレベルな規格外アニメ『銀河英雄伝説』

 1989年に刊行された外伝『スパイラル・ラビリンス 螺 旋 迷 宮』。本伝の物語より8年余前、まだ若いヤンが、“730年マフィア”と称され活躍したかつての英雄たちの秘密を調べ、解き明かしていくという物語である。1999年、そのアニメ版『螺旋迷宮』(全14話)を制作中だった石黒監督が、『銀河英雄伝説』について語った――。



――総監督として13年間『銀河英雄伝説』に関わってきて、今の思いは?

 気がついたら13年も経っていた、という感じです。もう干支が一回り以上したわけですね…。40代のときに制作を始めて、今や立派な60代になってしまいまして、この先どこまで続くんだろう、という気持ちですね。

――『銀河英雄伝説』は、どのような点が他のアニメ作品と違っているのでしょうか?

 普通のアニメ作品とはまるで逆の作り方をしている作品ですね。どちらかと言うと動きは少ないし、台詞は長くてややこしいし…。ファンの方たちはよく見ているなあ、と感心するくらい、ハイレベルな内容が多い。ですから、これが10年以上も続いているということは、本当に大したものだと思っています。原作が面白いことが、そのいちばんの理由だと思いますけどね。
  また、『銀河英雄伝説』は、他作品に比べて、キャラクターがリアルに設定されているんです。たとえば、普通のアニメでは、"1年中同じ服を着たまま"みたいなキャラクターが多いでしょう? 『銀河英雄伝説』のキャラクターは違っていて、1日に何回も着替えたりしますし、そういう細かな設定が実にたくさんあるんです。軍隊が舞台なので、キャラクターたちの階級もだんだん上がっていきますし…。それは、よく間違えます(笑)

――キャラクターの人数も多いですが、そのことで苦労したことはありますか?

 キャラクターとほぼ同じだけの声優がいるんです。これが、本伝だけで約130人! それから、去年と今年制作した外伝(『千億の星、千億の光』『白銀の谷』『汚名』<1998年制作>『螺旋迷宮』<1999〜2000年制作>)にも、やはり延べ何十人かのキャラクターが出てきますから、そろそろ200人に近い声優に出演してもらっていることになります。音響監督さんが、大変だと思いますよ。ベテランが多いので、スケジュールを押さえるだけでも難しいでしょうし…。

――アフレコのことで何かエピソードがあれば、教えてください。

 メインの声優にベテランが多いので、そういった意味では、落ち着いてやれているし、大変早く進んでいるのではないかと思います。ただ、作品が作品だけに台本に難解な言葉や漢字がたくさん出てくる。これが、読めなかったり間違えてしまったりする声優さん・・・多いですねぇ(笑)また、僕としては、ひとつだけ残念なのが、女性キャラクターが圧倒的に少ないことです(笑)

――外伝『螺旋迷宮』以降の外伝の制作について、教えてください。

 実を言いますと、原作を全部使い切ってしまいまして、それで、『螺旋迷宮』の次は、初のオリジナルをやろうということになっています。全くオリジナルのストーリーというのは、初めての試みです。面白いものが出来ると自負していますので、期待して観てください。

 このインタビューから1年後の2000年、アニメ版オリジナルストーリーの外伝3作、『叛乱者』『決闘者』『奪還者』が完成、発売されている。

<石黒 昇 プロフィール>

1938年8月生まれ、東京都出身。
1978年にアニメ制作会社アートランドを設立する。

TVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト」(1974〜75年)で演出を担当し、劇場版「宇宙戦艦ヤマト」(1977年)、TVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト2」(1978〜79年)ではアニメーションディレクターを担当した。TVシリーズ「超時空要塞マクロス」(1982〜83年)では、チーフディレクターとして若い才能の舵取り役を務める。
主な監督作品に、OVA「銀河英雄伝説」シリーズ(1988〜2000年)、映画「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」(1984年)、OVA「メガゾーン23」(1985年)、TVシリーズ「みかん絵日記」(1992〜93年)など多数がある。