――総監督として13年間『銀河英雄伝説』に関わってきて、今の思いは?
気がついたら13年も経っていた、という感じです。もう干支が一回り以上したわけですね…。40代のときに制作を始めて、今や立派な60代になってしまいまして、この先どこまで続くんだろう、という気持ちですね。
――『銀河英雄伝説』は、どのような点が他のアニメ作品と違っているのでしょうか?
普通のアニメ作品とはまるで逆の作り方をしている作品ですね。どちらかと言うと動きは少ないし、台詞は長くてややこしいし…。ファンの方たちはよく見ているなあ、と感心するくらい、ハイレベルな内容が多い。ですから、これが10年以上も続いているということは、本当に大したものだと思っています。原作が面白いことが、そのいちばんの理由だと思いますけどね。
また、『銀河英雄伝説』は、他作品に比べて、キャラクターがリアルに設定されているんです。たとえば、普通のアニメでは、"1年中同じ服を着たまま"みたいなキャラクターが多いでしょう? 『銀河英雄伝説』のキャラクターは違っていて、1日に何回も着替えたりしますし、そういう細かな設定が実にたくさんあるんです。軍隊が舞台なので、キャラクターたちの階級もだんだん上がっていきますし…。それは、よく間違えます(笑)
――キャラクターの人数も多いですが、そのことで苦労したことはありますか?
キャラクターとほぼ同じだけの声優がいるんです。これが、本伝だけで約130人! それから、去年と今年制作した外伝(『千億の星、千億の光』『白銀の谷』『汚名』<1998年制作>『螺旋迷宮』<1999〜2000年制作>)にも、やはり延べ何十人かのキャラクターが出てきますから、そろそろ200人に近い声優に出演してもらっていることになります。音響監督さんが、大変だと思いますよ。ベテランが多いので、スケジュールを押さえるだけでも難しいでしょうし…。
――アフレコのことで何かエピソードがあれば、教えてください。
メインの声優にベテランが多いので、そういった意味では、落ち着いてやれているし、大変早く進んでいるのではないかと思います。ただ、作品が作品だけに台本に難解な言葉や漢字がたくさん出てくる。これが、読めなかったり間違えてしまったりする声優さん・・・多いですねぇ(笑)また、僕としては、ひとつだけ残念なのが、女性キャラクターが圧倒的に少ないことです(笑)
――外伝『螺旋迷宮』以降の外伝の制作について、教えてください。
実を言いますと、原作を全部使い切ってしまいまして、それで、『螺旋迷宮』の次は、初のオリジナルをやろうということになっています。全くオリジナルのストーリーというのは、初めての試みです。面白いものが出来ると自負していますので、期待して観てください。
このインタビューから1年後の2000年、アニメ版オリジナルストーリーの外伝3作、『叛乱者』『決闘者』『奪還者』が完成、発売されている。