第30回鈴置洋孝<イワン・コーネフ/ケッセルリンク>「2001年DVD制作時インタビューより抜粋」
ケッセルリンクの“ウラ”とコーネフの“軽妙さ”
対照的なふたりを自由に演じる
基本的にはキャストの重複を避けて制作された『銀河英雄伝説』において、極めて異例の主要キャラクター2役を演じた鈴置洋孝。物静かで真面目な撃墜王、イワン・コーネフと、父親であるルビンスキーの追い落としを企む野心家、ケッセルリンクという正反対の役柄を演じ分けた彼が、その経験を語った――。
――イワン・コ−ネフとケッセルリンクの2役を演じて、如何でしたか?
2役を演じさせて頂いたと言っても、幸いなことに、このふたりが直接会話を交わすことはありませんでした(笑)。イワン・コーネフのほうが出番が多かったのですが、相棒の古川登志夫さん演じるポプランと丁々発止のやりとりをしていた印象が強く残っています。もうひとりのケッセルリンクは、出番としては少なかったのですが、いかにもウラのある性格で……(笑)。 そういう意味では、全く対照的な役柄をふたつ演じることができたのは、面白い経験でした。
2役だからと言って、敢えて“こういう風に演じ分けてやろう”というような意識はなかったですね。最初はイワン・コーネフだけを演じていて、ケッセルリンクは、その途中で頂いた役だったんです。だから、“あっ、今度は違う役をやるんだ”と、台本を読むと、もうその段階で今までとは全く違う役だったので、「これは、ある意味“遊び”ができるなあ」と思いました。その通り、結構自由にやらせて頂きましたね(笑)
当時の僕は、常道でキャスティングをするのであれば、多分ケッセルリンクだったと思うんです。ですが、音響監督の明田川 進さんが、敢えてイワン・コーネフ役を僕に振ってくださったということは、“軽さのある”演技を僕に要求なさっていたのだと思ったので、とにかく最初はずっと、これから戦闘に行くという緊迫したときなのに、そこでジョークを交わしたり、といった軽妙なノリの部分をいちばん意識して演じていました。
――『銀河英雄伝説』について、どう思われますか?
なんて壮大なドラマなのだろうと、とても印象的でした。
それから、スタジオでは1度もご一緒できなかったのですが、僕の本当に大好きな大先輩の富山敬さん!……もう、いなくなってしまいましたが……。その富山敬さんの演技をたっぷりと堪能して頂きたい作品です。
鈴置洋孝さんは、2006年8月6日、肺癌のためお亡くなりになりました(享年56歳)。
ご逝去を悼み、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
< 鈴置洋孝 プロフィール>
3月6日生まれ、愛知県出身。賢プロダクション所属。
劇団薔薇座より俳優としてデビュー。声優として出演している主なアニメーション作品には、映画・TVシリーズ「機動戦士ガンダム」(ブライト・ノア役 1979〜80年 テレビ朝日)、映画・TVシリーズ「キャプテン翼」(日向小次郎役 1983〜86年 テレビ東京)、映画「アリオン」(アポロン役 1986年)、TVシリーズ「聖闘士星矢」(ドラゴン紫龍役 1986〜89年 テレビ朝日)、映画・TVシリーズ「ドラゴンボール」(天津飯役 1986〜89年 フジテレビ)、映画・TVシリーズ「アキハバラ電脳組」(クリスチャン・ローゼンクロイツ役 1998年 TBS)など多数がある。近年は「鈴置プロデュース」を企画し、舞台作品を多数発表している。