――『銀河英雄伝説』という作品に対して、どのような印象をお持ちですか?
僕は、当時、こんなに長い作品に参加した経験があまりなかったので、とにかく物語の長さと登場人物の多さに驚きました。初めてのアフレコのときに、脚本家の首藤(剛志)さんがいらっしゃって、この作品に対する意気込みのようなことをお話しされて……それにまずびっくりしたんです。それまでは原作についてもあまりよく知らなかったものですから、その意気込みにまず驚いて、それで覚悟を決めて参加させていただきました。そのことは今でも鮮明に覚えていますねぇ……。
――ミュッケンベルガーを演じるにあたって、どのような点を意識しましたか?
スタッフにはきちんとしたイメージがあってキャスティングされていたわけですから、あまり小細工をしたり、変に役を作り込んだりということはしないで、とにかく、絵から受けるイメージを大切にして演じました。(スタッフから)説明を受けたのは、一徹な軍人であり、かなり高度な生活レベルにある人物である、と……。そのイメージの中で演じました。
とにかく絵に合わせなければならない、これは第一の約束事としてあるわけですが、その許される範囲内で、“歯切れの良さ”と“ゆったりとした話し方”、ふたつの大きなポイントを意識して演じました。ビシッとした歯切れの良い軍人らしい言葉遣い。そして、許されるぎりぎりまで、場合によっては、多少(絵の動きに間に合わなくて)こぼれてもいいから、とにかくゆったりと走らずにしゃべること。このふたつに重点を置いて、その中で軍人の“一徹”というものが表現できればと思って演じたつもりです。
この作品の収録をしている途中から、たくさんの人たちに、「『銀英伝』でミュッケンベルガーを演じていらっしゃいますよね」なんて声をかけられるようになりました。それで改めてミュッケンベルガーを見直したという感じでしたね。ですから、そういう意味では、本伝の後に収録した外伝が、いちばんミュッケンベルガーらしかったかな、と思ったりもします。
出演するからには、なんとかそのキャラクターの“心の内”を表現する工夫をしたいと思うのですが、やはり、絵のイメージににとらわれずに演じることはできません。だから僕は、絵から受ける印象と、他のキャラクターを演じる声優さんや場面の雰囲気などとの“和”を大切にして演じることにしています。特にミュッケンベルガーの場合は、全篇通して出ているのではなく、ポイントで出てくる役なので、“和”を意識しながら、彼の心の動きや内面を演じるのはとても難しかったですね。