第5回 清水恵蔵(キャラクターデザイン・総作画監督)「1994年 第3期制作時インタビューより抜粋」
キャラクターの表情ひとつで世界が膨らむ
――こだわりのディテール
作画監督、レイアウト監修として長く『銀河英雄伝説』に関わり、原作小説刊行10周年記念長篇『黄金の翼』(1992年)と劇場公開用長篇『新たなる戦いの序曲』(1993年)では神戸恵蔵として監督も務めた、清水恵蔵。1994年、アニメーション・ディレクターとして現場の最先端にいた彼が、『銀河英雄伝説』第3期の制作について語った――。
――アニメーション・ディレクターの主な仕事内容とは?
石黒(昇)監督とアニメーターとの橋渡し役ですね。具体的な仕事は、原画マンがそれぞれ担当している部分のレイアウトを描いてきますので、そのチェックをします。それから、少し前に長篇『黄金の翼』『新たなる戦いの序曲』の監督をやらせてもらいましたので、今回は、絵コンテを少しいじったり、キャラクターのニュアンスの違いを出せるように1人1人の歩き方や飲み物の飲み方にまでチェックを入れたりなど、演出面でもいろいろ口を出させてもらっています。
――気に入っているシーンを教えてください。
現在制作中の第3期の中では、第57話「キュンメル事件」の1シーンです。キュンメルがラインハルトのペンダントに触ろうとしたときに、ラインハルトが、周りの状況も考えずに「嫌だっ」とムキになって思わずキュンメルを張り飛ばしてしまう、というシーンがあるのですが……。思わず出てしまったラインハルトの人間らしい行動が印象に残っています。
――制作にあたり、どのような点にこだわっていますか?
原作の、“品の良さ” を大事にして制作しています。また、それぞれのキャラクターにみんな思い入れがありますね。見て頂ければ分かると思うのですが、画面の脇にいるキャラクターでも、さりげなく表情だけで芝居をしていたりします。そういった細かい部分からも作品世界が膨らむように作っているつもりです。
<清水恵蔵 プロフィール>
1952年3月2日生まれ。監督、作画監督。
主な作品に、OVA「銀河英雄伝説」シリーズ(1988〜2000年 総作画監督、監督)、TVシリーズ「キャプテン」(1983年、キャラクターデザイン)、映画「扉を開けて」(1986年、監督)、映画「11人いる!」(1986年、作画監督)、映画「劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険」(2001年、作画監督)、「新釈 眞田十勇士 The Animation」(2004年〜、監督・キャラクターデザイン)など多数がある。