――『銀河英雄伝説』という作品に対してどのような印象をお持ちですか?
ラインハルトというひとつのキャラクターを、これだけ長くやらせて頂けるということは、役者冥利につきるというか……幸せであるということは、間違いなく言えますね。印象や感想というより、自分の声優としての生活の一部のようになってしまっています。
僕は、オーディションを受けたのですが、そのときのことは忘れもしません。劇場公開用の『わが征くは星の大海』(1988年)のときに、僕と広中(雅志・キルヒアイス役)さん、そして、今はもう亡くなられた富山敬(ヤン役)さん、その3人で短いパイロット版のようなものを録ったんです。台本を見ても、四字成句がたくさん並んでいて、文語体も多い。いわゆる普通の口語体、『だからさぁ、こうなってさぁ』っていう文体ではないんですね。中国の春秋戦国時代のような、古式ゆかしい感じだったんです(笑)。僕にとっては、そのあたりが面白く感じられ、興味を持ってリラックスしてやれたから良かったのかな、という気はします。おかげさまでラインハルトに抜擢して頂きまして、ありがとうございました!(笑)
――ラインハルトという人物について、どう思いますか?
やはり、若くして皇帝になっていますから、もちろん普通の19歳や20歳の感覚では無理でしょうし、良い意味でも悪い意味でも精神的に大人ではあると思うんです。そういう点で、(役に)入りやすかったという面はありますね。ただ、ともすれば、考えていることや言っている内容が、熟年に相当するような感じのときもあるので……。それでも、あくまで若々しいラインハルト像みたいなものを残しておきたいな、というのはありました。
印象に残っている場面や台詞はたくさんあります。宇宙での「ああ、星はいい……」という台詞とか……。中でもいちばん印象的だったのは、キルヒアイスに手を差し伸べて、「行こうか、キルヒアイス、俺とお前の宇宙を手に入れるために!」と言う場面ですね。未来に向かって大志を抱いている雰囲気が、「いいなあ!」って思いました。
――演技の上で苦労したのはどういう点ですか?
本伝が終わってから、外伝というのがありまして、ラインハルトたちが16、7歳の時代に戻れって言うんです(笑)。やり始めると、「(ラインハルトは)もう少し若いですから、そういう風に皇帝っぽくしないでください」とダメ出しされたりして……。「今更どうするんだよ!?」なんて思っていました(笑)
僕はあまり、声で(役に)入っていこうとは思わないんです。その役の気持ちになりきっていれば、声も自然にその役の声になると思っている。だから、気持ちは16、7歳になっているのに、「いや、まだ……」と言われたときは、ちょっとショックでした(笑)。「ああ、これでもだめなのかぁ……」と思って、それからはかなりハイテンションに、声を高めにして張り気味に演じましたね(笑)
――アフレコのときのエピソードがあれば、教えてください。
最初のアフレコのときは、僕と広中さんがいちばん若かったんです。他はベテランの方ばかりだし、出演者の人数も半端じゃない……。別名“銀河声優伝説”と言われていたように、出ていない人がほとんどいないのではないかというくらいでしたから。当然、かなり緊張はしていました。僕は、背伸びをするタイプではないのですが、『銀河英雄伝説』の初期の頃には、どこかそういうことをしていた面があるのではないかという気がします。「トチらないように!」ということではないんです。……そんなことを思っていてもトチるときはトチりますから(笑)。ただ、あのときは「冷たい目で見られてるいのではないか」なんて後ろが気になったりしていましたよ。僕が勝手に気にしていただけなんですけれどね(笑)。
各シリーズの後に必ず打ち上げがありましたし、そこで食事をしたり、飲みに行ったり、他の仕事でお会いしたときに飲みに行ったり、そういうことは皆さんとそれぞれありました。ただ、これだけ長いことやっていて、まだ1回も旅行に行ったことはないんですよ。だから是非1度、1泊2日で温泉にでも行きたいなあ、なんて思っているんですけれど、どうでしょうか?(笑)