――登場するキャラクターで、印象に残っているのは?
やっぱりヤン・ウェンリーですね。野望を持っているわけではなく、1歩退きながらも、周りの仲間から立てられていく形でリーダーシップをとっていくヤンを見ていると、自分も人間的にああいう風になれたらなあ、とどうしても思ってしまいます。もちろん、とてもなれませんけれど(笑)。意志の力で権力を勝ち取っていくラインハルトにも心惹かれはしますが、自分には絶対手が届かないものへの憧れに近いのだと思います。 一見平凡な感じがするヤン・ウェンリーは、見ていて落ち着きます。癒し系ですね(笑)
――ナレーションをする上で、どのような苦労がありましたか?
役者には、(絵と台詞の)口を合わせなくてはいけないという大変さがあります。ナレーションには、そういう緻密さは要求されませんが、それでも、どうしてもシーンの時間内に収めるために、ここは速く読まなくてはいけないという部分が多くなります。ゆったりと余裕を持ってナレーションできたことなんてあったのかなあ、と思ってしまうくらいです。芝居だと、速く読んだり遅く読んだりという緩急があるのですが、ナレーションの場合は、ある一定の速度を保たなくてはいけません。そこが芝居とはまた違った難しさだという気がしますね。
ですから、『銀河英雄伝説』でも、初めの頃はもう……、緊張感が胸の方にぐーーっとせり上がって来るように感じられることがありました。実は、今でもたまにあるのですが(笑)。そうすると、息が詰まって来てしまって、息継ぎができなくなったりね。役を演じるときには、そこまでの緊張は感じないのですが、ナレーションをするときは、そういうことがありましたねぇ……。
――アフレコでのエピソードがありましたら、教えてください。
僕は、この作品が、ナレーションの仕事をするきっかけだったんです。『銀河英雄伝説』をやらせて頂いてから、他にもナレーションの仕事を頂くようになってきたんですよ。ですが、当時のベテランの声優さんたちには、ナレーションもなさっている方が多かったものですから、背中に先輩たちのプレッシャーを凄く感じましたねぇ……。あるとき、ひとりの先輩が、冗談で「屋良、俺が読むよ」なんて言って、僕のナレーション部分を読んでいるんですよ!(笑) それはもう大変なプレッシャーでしたね(笑)
そうこうしているうちに皆のスケジュールが合わなくなって、それぞれ別々に録音をするようになって……いちばんホッとしたのは、僕なんじゃないですかね(笑)
――ファンの皆さんに一言お願いします。
この作品は、皆さんが見たときの年代によっても感じ方が違うと思います。だから、何年か経ってもう1度見ると、好きなキャラクターが変わっていたりすると思うんです。例えば、10年前に見たときにはヤン・ウェンリーがいいなあと思ったとしても、10年経ったときには、そんなに目立たなかったキャラクターの、「あの生き方が良かったなあ」なんて感じることがあると思います。だから、一生の宝物としてこの作品を大事にしてもらいたいと思います。また、何かに悩んだりしたときにも、この作品を見れば、きっと解決の手助けとなるようなヒントが得られるのではないかと思っています。この作品を、人生の相談相手、良き伴侶にして頂ければいいなあと思っております。
それでは、最後に、行きますよ?
「銀河の歴史が、また1ページ……」